法テラスは役に立たない?無料相談の条件やメリット・デメリットを解説

2023.06.15

無料で弁護士と相談できる「法テラス」ですが、どんな場面で役に立つのか具体的には知らない人が多いのではないでしょうか。

無料で相談できる内容が限られていることから「役に立たない」などの評判もありますが、使い方を間違えなければ利用するメリットは大きいです。

また、弁護士事務所に依頼すると必ずしも法テラスが利用できなくなるというわけでもありません。

この記事では何かと勘違いしがちな法テラスについて、無料相談の条件などに正しい知識やメリット・デメリットを解説していきます!

正しい知識を身につけることで、せっかくつかえる制度をつかわないまま損をしてしまったということにならないようにしましょう。

法テラスとは日本司法支援センターの愛称

法テラス

法テラスの正式名称は日本司法支援センターです。

日本司法支援センターは国が平成18年に設立した公的な法人であり、管轄は法務省となっています。

日本司法支援センターの愛称が「法テラス」なのです。

法テラスは借金や相続、離婚などといった法律トラブルを抱え、どうすればいいのかわからないと困っている人に対して、問題を解決する手助けをするのが役割となっています。

法テラスが行っている主な業務

情報提供業務

法律問題で困っている方に対して法律に対する情報やそれに対応する団体(弁護士会など)などの情報を提供しています。

民事法律扶助業務

お金に困っているトラブルを抱えた方に対して、無料で相談を行い、弁護士費用などの立て替えを行っています。

犯罪被害者支援業務

犯罪被害者が適切な支援を受けられるように情報提供などを行っています。

国選弁護等関連業務

国選弁護人との契約や報酬や費用の支払いなどを行っています。

司法過疎対策業務

法律の専門家などがいない司法過疎地域に対して、法テラスの地域事務所の設置などを行います。

様々な業務を行っている法テラスですが、その中でも需要の高いのがお金のかからない無料での相談です。

続いてこの無料相談について詳しく見ていきます!

30分×3回、弁護士・司法書士に無料で法律相談

弁護士費用などを支払う余裕のない方が、問題が起きた場合にお金をかけずに専門家に相談をすることが可能です!

話す相手は法テラスが契約している現役の弁護士などであり、1回の時間は30分程度となっています。3回まで無料です。

ちなみに一般的な相場は30分となると5千円程度です。

面談だけでなく電話相談も利用できる

法律相談は面談だけでなく、電話相談をすることも可能です。

そのため、居住地や交通費などを気にすることなく相談することができます。

ただし、誰でもただで相談ができるわけではありません。

無料相談できるのは「民事法律扶助制度」該当者

無料相談できるのは民事法律扶助制度に該当する者のみとなっています。

民事法律扶助制度とは、法律トラブルを抱えているが経済的に弁護士などに依頼することが困難となっている人に対して、無料で法律相談を行ったり、費用を立て替えたりする制度です。

ここでは民事法律扶助制度を利用できる条件について詳しく解説していきます。

民事法律扶助制度を利用できる条件

条件は以下の3つです。

  • 民事法律扶助の趣旨に適すること

報復が目的である場合や宣伝を行うためなどの場合は利用できません!

  • 勝訴の見込みがないとはいえないこと

弁護士・司法書士費用などの立て替えをする場合は、和解、調停、示談等により解決の見込みがあることが条件となります。

  • 資力(収入・資産)が基準以下であること

資力基準については収入要件と資産要件の2つがあります。

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

収入要件

申し込みをしている人とその配偶者の合算手取り月収額(ボーナスを含みます)が以下表の基準以下であることが条件となります。(離婚事件の場合は配偶者の収入は合算しません)

同居家族の人数 手取り月収額 家賃(住宅ローン)加算額
1人 18万2,000円以下
(20万200円以下)
4万1,000円以下
(5万3,000円以下)
2人 25万1,000円以下
(27万6,100円以下)
5万3,000円以下
(6万8,000円以下)
3人 27万2,000円以下
(29万9,200円以下)
6万6,000円以下
(8万5,000円以下)
4人 29万9,000円以下
(32万8,900円以下)
7万1,000円以下
(9万2,000円以下)

基本的には家族の人数が多いほど基準額は高くなります。

( )内の金額は東京や大阪など生活保護の1級地の場合に適用となる金額です。

また、家賃や住宅ローンを負担している場合は、表の金額を上限に負担額を基準額に加算することができます

こちらも東京や大阪などに住んでいる場合は( )内の金額が適用となりますので注意してください。

同居家族が5人以上の場合は、ひとり増えるごとに基準額に30,000円(33,000円)を加算していきます。

資産要件

資産についても申し込みをしている人と配偶者の合算の資産額が以下表の基準以下であることが条件となります。(離婚事件の場合は配偶者の資産は合算しません)

同居家族の人数 資産合計額
1人 180万円以下
2人 250万円以下
3人 270万円以下
4人 300万円以下

資産額は現金と預貯金のほかに有価証券や不動産(自宅除く)の時価の合計額です。

資力基準を満たすには収入要件と資産要件の2つとも満たす必要がありますので注意してください。

法テラスを利用するメリット

メリット

ここまで法テラスが行っている業務の概要や利用できる条件について解説してきました。

ここでは、実際に利用する際のメリットを紹介していきます。

一から何をすればいいのか教えてもらえる

一般人が突然、法律トラブルにあった際にはまずそもそも何をすべきなのかがわからないものです。

誤った行動をしてしまい、後々それが困ったことを引き起こしてしまう可能性もあります。

そういった時に、一から法制度の説明や何が法的に問題となっていて、どんな解決方法があるのかを教えてもらえるのは大きなメリットです。

法テラスは法的トラブルに対する総合案内所の役割を持っています。

無料で法律の専門家に相談ができる

法律トラブルに巻き込まれた時に多くの方が弁護士に相談しようかな?と思い浮かぶでしょう。

ただし、弁護士もボランティアではありませんので、相談する場合は費用がかかります。

法テラスを利用する場合は、収入や資産の条件はあるものの、無料で弁護士や司法書士といった法律の専門家に相談することが可能です。

また、同じ案件でも無料で3回まで相談することができます。

民間の法律事務所でも初回相談は無料というものはありますが、3回無料というのはなかなかありません

この点も大きなメリットと言えるでしょう。

弁護士や司法書士を紹介してもらえる

テレビコマーシャルや雑誌などで弁護士事務所の広告はよく見かけると思いますが、身近な知り合いに弁護士がいるという方は少ないでしょう。

いざという時に、弁護士に頼ればいいことはわかるものの、じゃあどの弁護士がいいのかは一般人にはわかりません。

こういった場合でも法テラスに相談することで、あなたに起きてる法律トラブルに合った弁護士や司法書士を紹介してくれます。

一口に弁護士といっても、得意分野・不得意分野はあるものです。

法テラスでは数多くの弁護士や司法書士の中から自分のトラブルに適した専門家を紹介してくれます

弁護士費用などの費用を立て替えてもらえる

お金に困っている時に限って、法律トラブルに巻き込まれるということもあります。

そういった場合には、法的手続きの代理や書類作成などを依頼した費用などを立て替えてもらう制度が利用可能です。

この制度を利用した場合は、弁護士費用などを法テラスが立て替え払いして、申込者が法テラスに分割で費用を返済していくという形になります。

返済も分割でしていくことになりますので、手元のお金に不安がある方も安心して利用することが可能です。

公的機関なので安心感がある

弁護士や司法書士といった士業は国家試験を突破した者に認められたものではありますが、全ての弁護士や司法書士が依頼人にとって優良とは限りません。

また、どの程度の能力があるのか、どういった実績があるのかも一般人にはなかなかわかりにくいものです。

法テラスは国が設立した公的な機関ですので、ここを通すことで悪徳業者に捕まってしまうというリスクを回避することができます

法テラスを利用するデメリット

デメリット

つづいて、デメリットについても解説していきます。

メリット・デメリット両方を踏まえた上で、自分にとってメリットの方が大きいかどうかをしっかり確認してください。

誰でも利用できるわけではない

既に説明したように法テラスは誰でも利用できるわけではありません。

収入要件や資産要件がありますので、これらの基準を満たしている必要があります。

また、これらの基準を満たしていることを証明する書類の提出が必要です。

経済的な状況は人によってそれぞれですので、場合によってはお金に困ってはいるものの基準を満たしておらず、利用できないということも考えられます。

経済的な困窮者を支援するためという制度上致し方ない部分ではありますが、誰でも利用できるわけではないという点はデメリットです。

審査に時間がかかると着手が遅れる

法テラスを利用するには、基準を満たしているかどうか確認するために書類を提出し審査を受けることが必要です。

当然、審査には時間がかかりますので、その分法的トラブルを解決するための着手が遅れてしまうことになります。

法的トラブルは様々な問題がありますが、時間がかかることがマイナスになってしまう問題もあります。

そういったケースでは着手までに時間がかかるという点はデメリットです。

弁護士を自分で選べない

法テラスを利用した場合は、弁護士を紹介してもらうことになります。

身近な弁護士がいない人にとってはこの点はメリットにもなりますが、自分で弁護士を選ぶことができないということは合わない人が担当になる可能性もあるということです。

また、無料相談は3回までとなっていますので、合わないと思っても何回も変えてもらうということはできません

法テラス登録弁護士は経験が浅い

法テラスで紹介される弁護士は法テラスに登録されている弁護士です。

経験が浅い弁護士の場合、自分では案件が取れないので法テラスに登録して仕事をもらっているという場合もあります。

そのため、経験の浅い弁護士が自分の担当になるという可能性もありこの点はデメリットです。

法テラス案件に不熱心な弁護士もいる

法テラスに登録している弁護士が全て依頼者に対して真摯に向き合ってくれるとは限りません。

もちろん、それは民間の弁護士も同様ですが、民間の弁護士は自分で選ぶことができますので合わなければ依頼しなければいいだけです。

ですが、法テラスの場合はそういうわけにはいきません。

不熱心な弁護士が自分の担当になるかも知れないという点はデメリットといえます。

弁護士を自分で選んで法テラスを利用する方法

弁護士を自分で選んで法テラスを利用する方法

最初に法テラスに連絡をした場合は、弁護士を自分で選ぶことはできません。

しかし、法テラスは弁護士を自分で選んだ後でも利用することが可能です。

この方法であれば、どんな弁護士が担当になるかわからないという法テラスのデメリットを防ぐことができます

ここでは弁護士を自分で選んで法テラスを利用する方法について解説していきます。

民事法律扶助制度は法律事務所を通しても利用できる

民事法律扶助制度は法テラスでなければ利用できないというわけではありません。

民間の法律事務所を通して同制度を利用することも可能です。

ただし、その場合はその法律事務所の弁護士が法テラスと契約を結んでいる必要があります。

自分が依頼したい法律事務所がある場合は、その事務所が法テラスと契約しているか事前に確認しておきましょう

無料相談を利用して自分にあう弁護士を探そう

法テラスでは1案件につき、3回まで無料で相談をすることが可能です。

この3回を使って、自分に合う弁護士を探すということもできます。

また、さきほど説明したように民間の法律事務所であっても法テラスと契約をしていれば利用することが可能ですので、初回無料相談などを利用して法律事務所の中から自分に合う弁護士を探すといったことも可能です。

法律トラブルを解決していくにあたり、担当の弁護士を信頼できるのかといった点は大変重要となりますので、これらの方法で自分に合った弁護士を探してみましょう。

おすすめの法律事務所3選

最後におすすめの法律事務所を3つ紹介していきます。

どの事務所も豊富な実績を持っていますので、どのような案件でも解決にむけた相談を行うことが可能です。

それぞれの概要や特徴を解説していきますので、ぜひ事務所選びの参考にしてください。

ベリーベスト法律事務所

ベリーベスト

比較項目 内容
設立年 2010年
事務所数 国内61・海外2
所属弁護士・司法書士数 340名以上
得意分野 法律相談全般

ベリーベスト法律事務所は全国対応している大手の法律事務所です。

全国に拠点が63もあり、所属する弁護士も300名を超えています

経験豊富な弁護士が多数在籍しており、蓄積されたノウハウを活かしたサービスが特徴です。

交通事故、労働問題、離婚、債務整理など、多様な法律トラブルに対応していますので、どんな問題でも安心して相談できます。

サンク総合法律事務所

サンク

比較項目 内容
設立年 2017年
事務所数 国内1
所属弁護士・司法書士数 7名
得意分野 法律相談全般

サンク総合法律事務所は東京の中央区に事務所を構える法律事務所です。

国内1拠点、在籍弁護士は7名とのことですが、債務整理の経験が豊富なスタッフが多く在籍しているとのこと。

2017年に設立された比較的新しい法律事務所ですが、大手法律事務所のように電話やメールでの相談も受け付けており、相談料が何度でも無料となっています。

そのため、仕事が忙しくなかなか事務所に行けない方や相談料金に不安を持っている方でも安心して利用可能です。

債務整理だけでなく、民事事件一般や不動産取引など取り扱い業務の幅が広いことも特徴と言えるでしょう!

弁護士法人「響」

弁護士法人響

比較項目 内容
設立年 2014年
事務所数 国内7
所属弁護士・司法書士数 弁護士34名
得意分野 法律相談全般

弁護士法人響は東京を中心に大阪や沖縄など全国に7つの事務所を持つ大手の法律事務所です。実績も豊富でメディアに多数出演している弁護士も多く在籍しています。

グループ一丸となって問題解決に取り組む姿勢や1人1人に専任の担当弁護士を付けてくれることなど、お客様に徹底的に寄り添う姿勢が高く評価され、開業から数年で国内7拠点、弁護士数34人にまで急成長をしている弁護士法人です。

取扱い業務は交通事故や債務整理、離婚、労働問題と幅広く、契約をするまでは何度でも無料で相談を受け付けているため、じっくり検討してから依頼することができます。

法テラスに関する疑問を解決

ここでは、法テラスに相談する際によく寄せられる疑問についてお答えします。

法テラスは全国に何ヵ所ある?

法テラスは全国に84カ所あります(2020年10月現在)。

1つの都道府県に1カ所以上拠点があるため、全国どこにいても相談をすることが可能です。

また、法テラスでは自治体と連携して、事務所がない市町村などに月に1回程度訪問して予約制の無料出張相談を行っているため、こちらを利用するのもおすすめです。

法テラスで任意整理を依頼したときの予算は?

法テラスで任意整理を依頼した場合の予算は次の通りです。

  • 1社 実費10,000円、着手金33,000円
  • 2社 実費15,000円、着手金49,500円
  • 3社 実費20,000円、着手金66,000円
  • 4社 実費20,000円、着手金88,000円
  • 5社 実費25,000円、着手金110,000円
  • 6~10社 実費25,000円、着手金154,000円
  • 11~20社 実費30,000円、着手金176,000円
  • 21社以上 実費35,000円、着手金198,000円

借入先の金融機関の数によって報酬が変わりますが、すべてわかりやすく料金が公表されていました。

なお、過払い金が発生していてこちらを請求する場合は、別途報酬金がかかるとのことなので、まずは無料相談で自分の債務の状況等を詳しく説明しておくといいでしょう。

法テラスの利用が向いているのはどんな人?

弁護士事務所を利用するよりも法テラスを利用するのがおすすめなのは、次の条件に当てはまる方です。

  • 収入が多くない
  • 費用を安く抑えたい
  • 費用を一括で払うことができない

法テラスを利用するには収入や資産の制限があるため、そもそも収入が多い人は利用できません。

そのかわり収入が少ない人が利用しやすいように弁護士事務所よりも費用が低額です。

通常契約時に一括払いを求められる着手金等についても、法テラスがいったん立て替えてくれるため後から分割払いが可能となっています。

まとめ

今回は法テラスについて概要やその特徴、利用するための条件やメリット・デメリットなどについて解説しました。

法テラスは役に立たないとも言われますが、使い方次第ではあなたの法律トラブルを助ける大きな支えになります。

利用できる条件についても、住んでいる場所や同居家族の人数、家賃や住宅ローンの負担の有無などで変わってきますので、見聞きした情報をそのまま鵜呑みにせず、自分が対象となるのかどうかきちんと確認してみてください。

条件を満たしているのであれば、十分利用する価値のある制度です。

民間の法律事務所を通して利用することもできますので、ぜひこの記事を参考に法テラスの利用を検討してみてください。

法テラスは一般市民によるリーガルサービスの利用を拡充するために組織された公的機関です。そのため、何かしらの法律トラブルに巻き込まれてしまい、自分で何から手を付ければ良いかわからないという場合には、気軽に法テラス窓口に連絡・相談してみると良いと思われます。

もっとも、法テラスは法律事務所ではないので、個々人の法律問題に立ち入って解決まで導いてくれるということはありません。このような解決に至る法律サービスを享受したいのであれば、やはり弁護士に事件処理を依頼しなければなりません。法テラスはあくまで、依頼者と弁護士をつなぐ仲介組織であると理解するとわかりやすいと思います。

監修者プロフィール

弁護士 梅澤康二

東京大学法学部卒業。アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所後、自らプラム法律事務所を設立・運営している。
2008年より弁護士として活躍し、一般民事・交通事件・債務整理・相続問題に係る法律相談、刑事事件に係る法律相談に対応。

プラム綜合法律事務所 : http://www.plum-law.com

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